平成29年度調査研究報告書

調査研究・情報提供事業等

九州第4次産業革命実証ラボ構想概要
第4次産業革命を契機とした九州地域における産業イノベーション

〈2年間の成果概要報告〉
九州地域経済・産業活性化のための「IoT・第4次産業革命」研究会(平成28年度)
「「IoT・第4次産業革命実証ラボ」検討会(平成29年度)

1 本活動の目的・狙い

本活動は、九州経済産業局、九州地域産業活性化センター、及び、九州産業技術センターにより、九州ものづくり企業及びその関連企業へ第4次産業革命に関する情報提供、及び、九州地域産業活性化へ向けた政策検討を支援することを目的に行なわれた。九州ものづくり企業及びその関連企業が、第4次産業革命時代に事業継続・発展するための事業機会、及び、業務改革機会をより多く発見できるようにすることが狙いであった。

2 CPS・デジタル革命としてのIOT・第4次産業革命

IOT・第4次産業革命はCPSの実現である。CPSは「経営管理技術・製造管理技術の形式知化・組織知化・ソフトウェア化、さらにクラウドを活用したデジタル化による知識共有、技術共有・技術移転、意思決定の仕組み」である。限界費用ゼロのソフトウェアを活用した生産性革新、働き方改革である。CPSは、技術継承、事業拡大、海外展開、PMI(Post Merger Integration、企業吸収・合併後の経営統合)などの製造業の課題解決に大きく貢献する。IOT・第4次産業革命は、九州地域の中小製造業が現在直面している「人材不足問題」、「事業承継問題」、「技術継承問題」を解決する際に極めて有効な技術である。

2.1 CPSは、経営管理技術と製造管理技術の可視化・デジタル化による事業展開のスケーラビリティの担保へ貢献

IOT・第4次産業革命は、IOT、PLM、AI、クラウド技術などを駆使したサイバー・フィジカルシステム(CPS)の実現とされている。工場に投資をするからといって、単に個々の工場の原価低減を図ることだけを目的とするものではない。CPSにより実現するのは、まず経営管理技術と製造管理技術の可視化、次にデジタル化による事業展開のスケーラビリティの担保である。
経営管理技術とは、QCD(生産ロットトレース・品質管理プロセス、原価管理・原価企画、納期・スケジュール管理など)のことである。製造管理技術とは、製造に関わる各種技術(製品設計、部品構成管理、生産22技術・製造設備設計・調達、製造管理、設備管理、各種の現場における技能・匠の技等)である。
経営管理技術・製造管理技術を、形式知化・組織知化・ソフトウェア化し、ブラックボックス化することで、経営管理ノウハウや製造技術スキルの共有・移管が容易になる。ソフトウェアは限界費用ゼロ(コピーすることが可能)であり、事業のスケール(S)アウトを考慮した場合最も重要な資源である。
このためCPSは、技術継承、海外展開、PMIなどの製造業の事業課題解決に大きく貢献する。

2.2 九州地域産業が直面する課題を解決するCPS

2.2.1 市場と組織の閉塞

国内市場の成熟や停滞、取引先企業の生産拠点の海外展開、今後の人手不足への懸念、特に製造現場技術者の高齢化などを考慮すると、このままでは閉塞状況に陥る危険性も高い。

2.2.2 海外展開への要請と技術承継の難しさ

九州の製造業企業はわが国の輸出企業を顧客としてきた高い技術水準を持つ企業が多い。日本にいながらにしてグローバル市場に展開できていたとも考えられる。一方、これまでの顧客の多くは、生産拠点を海外展開しはじめているため、継続的な取引のためには海外展開を要請されるケースも増えており、こうした要請に円滑に対応することが急務となっている。しかしながら、海外への技術移転の際は製造に関わるノウハウを全て教えることになり技術流出となる。逆に、生産技術の匠の高齢化、人手不足のよる若手への技術移転の難しさなども指摘されている。海外工場の若手技術者へ技術移転するしかないという危機的な現実もある。

2.2.3 九州の中小製造業が保有する高い技術力を活かすために

九州製造業の生産加工技術は、製造現場の優れた暗黙知(いわゆる匠の技)にあると考えられる。形式知化・組織知化・ソフトウェア(アルゴリズム)化されているわけではない。CPSは、それらの技術を形式知化・組織知化し、ソフトウェアにブラックボックス化することで、九州地域の中小製造業が現在直面している「人材不足問題」、「事業承継問題」、「技術継承問題」、「海外展開問題」を解決する際に極めて有効な技術である。

3 産業政策としてのIOT・第4次産業革命

IOT・第4次産業革命では、産業レベルでの破壊的、かつ継続的なイノベーションを産業構造のモジュール化を図ることにより政策的に推進している。この結果、モジュール技術の提供、モジュールを組み合わせるシステム技術の提供など、地域産業にとっての新しい事業機会が広がる。

3.1 産業のモジュール構造設計によるオープンイノベーション

IOT・第4次産業革命では、CPSを推進するために産業のモジュール構造設計が行われている。モジュール間インターフェイスが国際標準化されることにより、異なる企業から提供される設備や機器が"つながる"。これは各々のモジュールが"組換え可能"となることである。組換え可能となることで、継続的に、進化・発展していく構造を"システム"にビルトインできる。このことが、オープンイノベーションの基礎となる。
IOT・第4次産業革命は、米国IICと独インダストリ4.0フォーラムが提携したことにより、もはや米国流・ドイツ流があるわけではない。モジュール間インターフェイスの国際標準化、今後の技術開発ロードマップを含むレファレンスフレームワーク(RAMI4.0)の設計推進は、既に世界各国が協調で取り組んでいる。日本政府も、2016年よりドイツでの取り組みと連携し既に動き始めている。このため「協調して確立していく国際標準」を活用していかに戦略的に事業展開するかが重要な論点となる。

3.2 オープンイノベーションにおける2つの競争

3.2.1 要素モジュールでの競争

オープンイノベーションにおける競争は、主に2つの領域がある。
第1の競争は、要素モジュールでの競争である。モジュール設計の結果としてのミッシングリンクを発見し、いち早く要素モジュール開発を行う競争である。ベンチャーキャピタルや各種ファンドなどのリスクマネーを投入したスタートアップや支援機能であるアクセレレータが重要とされる理由はここにある。もちろん、既存技術で当該モジュールの機能を満たせればいきなり世界市場へ展開できる。九州の中小・中堅企業の技術がそれに相当するケースも十分考えられる。
例えば、欧州の中小企業ではスイスのKEBA社が中小型の射出成型機のPLC市場で世界シェアトップに急成長した。また、生産ラインの電気系統の設計ソフトである独E-PLANの躍進も著しい。この他、国際標準に沿ったプロダクトやサービスを提供することで躍進している中小企業は既に多数存在している。

3.2.2 コーディネーション力の競争

第2の競争は、モジュールをシステムとして組み合わせて価値を創造するコーディネーション力の競争である。IOT・第4次産業革命の要素技術は、既にかなり存在するので、それを組み合わせて使いこなす「アイデアと設計・コーディネーション」の競争という考え方が重要である。「新たな価値を生む社会システムとして新しいビジネスモデルを創造するというビジネスへの応用力の競争である。

3.2.3 システムインテグレーターの重要性

産業構造のモジュール化とインターフェイスの標準化により、個々のモジュールは、世界市場という巨大でかつ均一の市場を獲得できるため破壊的な価格設定がなされる傾向にある。既に、クラウドで提供されるソフトウェアにはその兆候が観測されている。利用しない手はない。こうしたオープンな環境を最も有利に利用できる立場にあるのが、システムインテグレーターである。

4 IOT・第4次産業革命の4つのインパクト~加速する業務革新とビジネスモデルの革新~

CPS関連技術の発展と政策的な製造設備産業のモジュール化により、大きく4つの動きが予想される。

九州地域の産業でも同様の動きが期待できる。インパクトは大きいはずである。

4.1 設備の設計・調達・構築・運用・保守活動が円滑・柔軟になり、かつ遠隔地でも可能となること

第4次産業革命では、製造に関わる技術のモジュール化・モジュール間インターフェイスの標準化が急速に進展する。異なる企業の設備やコントローラーが"つながる"ということは、「組み合わせが効く」ということであり「モジュール単位での組換えが効く」ということである。
モジュール単位での組換えが効くということは、これまで困難であった最適な製造システムを設計する際の、マルチベンダーでの製造設備の構成・運用が、容易になるということを意味している。また、ユーザーの製造業にとっては、部分的に漸次の最新技術への投資が容易になる。このため、これまでは難しかった製造業の生産技術・製造技術の最適化が急速に進む可能性がある。
さらに、IOTを活用した遠隔での保守業務の支援サービスが可能となり、設備メーカーにおける運用支援・設備保守業務の生産性向上が期待できる。
具体的には

について、受注品毎・日毎に組み替え可能なレベルのフレキシビリティが実現されるのである。

4.2 製造設備のシステムインテグレーション産業の生産性向上

マルチベンダーでの製造設備の構成・運用が容易になるため、マルチベンダーでシステムインテグレーション産業が活躍できる環境が創造される。メインフレームからオープン化したかつてのコンピュータ産業の例にあるように、製造設備産業においても、マルチベンダー(異なる多様な企業の設備やソフト)のシステムインテグレーション(組み合せ)産業が台頭してくることが予想される。これまでシステムインテグレーション産業は、製造業では必ずしもなく、サービス業として取り扱われその実態は統計的にあまり知られていなかったが、高度なソフトウェアを活用した、いわば「システム産業」として、製造業の極めて重要な機能を提供している高付加価値の知識集約型サービス産業として成長が期待される。

4.3 スマートなマザー工場の台頭

海外に多数の関連工場が稼働していることをイメージして欲しい。各現場では、日々さまざまな問題などが発生する(例えば設備の瞬時停止)。基本的に、まずは現場でこうした問題に対処することは現状と変わらない。しかし、ここでは問題発生の検出、問題の発生原因や対応方法の選択肢等が、あらかじめデジタル化された知識データベースにより提示される。世界中の工場は常に最新の知識データベースを参照することができるという仕組みが「スマートなマザー工場」である。また、過去に発生していない問題が初めて発生した、またはいったん問題を解決した場合でもある一定周期で同様の問題が繰り返される、つまりさらに本質的な対応が必要な現象が発生した場合には中枢のマザー工場へ問い合わせ問題解決に即応できる仕組みである。マザー工場の支援の結果、解決された問題や新たな有効な解決策が知識データベースに反映される。
具体的には、遠隔工場の

について、現場データに基づき短時間で(場合によっては製造中に)改善できるだけのアジリティが実現されるのである。

スマートなマザー工場の例は、ボッシュ社のブライヒャッハ工場が有名である。既に同種の製品を製造する世界11の自動車部品工場群、5000の標準設備をネットワークしたスマートなマザー工場を運用している。ボッシュ社のこうした仕組みが構築できる理由は、ブライヒャッハ工場及び同種の製品を製造する世界11拠点の工場で全てボッシュが製造した標準の工作機械を活用しているからである。工作機械とPLC(プログラマブルロジックコントローラー)などの制御機器などが、工場によりバラバラだとこのような「スマートなマザー工場」の実現は今のところ容易ではないといえよう。しかし、現在行われているインダストリ4.0のモジュール化、モジュール間インターフェイスの標準化が進展すると、標準に対応した工作機械であれば、必ずしもボッシュ製の工作機械でなくとも、全てネットワークの中に取り込むことが可能となる。こうすることで、さらに幅広い範囲の工場群において、スマートなマザー工場の整備・運用が可能となると予想される。

203X年の製造業とその周辺の姿:Vision

生産を含む製造者の様々なビジネス・プロセスが、リアルタイムに生体の細胞のように自律的に働き,プロセスの機能そのもの、プロセスの組合せ、ときにはビジネスモデルさえもフレキシブルに変化させられる仕組みができている

  • A) 顧客要求を満たす製品を供給するための「製品設計、生産技術、生産システム準備/運用、モノの輸送」のフレキシビリティ
    •  1.受注品毎に日単位で組み替えられる製造企業間連携。
    •  2.受注品毎に時間単位で製品設計から製造手順まで決められる組織/企業連携。
    •  3.受注品毎に時間単位で組み替えられる生産システム(製造プロセス/設備)。
    •  4.企業間中間品、最終出荷製品の輸送の最適化
  • B)現場データに基づき下記を短時間で(時には製造中に)「改善」できるフレキシビリティ
    •  1.製品製造処方(製造プロセスそのもの)
    •  2.プロセスの計測制御/運転方法
    •  3.生産システムのアベイラビリテ

2017/11/30RRI インダストリアルIoT 国際シンポジウム
ロボット革命イニシアティブ協議会 石隈 徹氏(アズビル(株))講演資料

4.4 製造業の製造プラットフォームサービス事業の展開

スマートなマザー工場の基盤や仕組みを、運用支援サービスとして外部企業へサービス提供するという「製造プラットフォームサービス事業」への展開が、既に進展している。既に複数の萌芽事例がある。TRUMPF(平成29年の第2回委員会での)からの報告等も板金加工のプラットフォームをソフトウェアとして結実し、サービス事業を展開している例であった。この他多くの企業(BOSCH、SIEMENS、KUKA他)も同様の動きをしていることは注目すべきである。

しかしながら、「製造プラットフォームサービス事業」への投資価値を理解することは必ずしも容易ではない。それは「製造プラットフォームサービス事業」の狙いが、現場感覚からは遠い「株式価値(時価総額)の拡大」という経営戦略であるからである。
「製造プラットフォームサービス事業」が株式時価総額を拡大する理由は3つある。
第1に、生産設備の販売事業は景気に大きく左右されるが、サービス事業は比較的収益が安定した事業であること。
第2に、大きな設備投資が必要な製造業と比較すると、限界費用ゼロのソフトウェア中心の事業であるためROA(総資産利益率)が高いこと。
第3に、新興国へ今すぐに参入でき、投資家に対して成長性を訴求できることである。安定した収益、ROAの高さ、成長性が揃うと、たとえ売上規模が小さくとも資本市場は高く評価し株式時価総額の拡大が期待できる。株式時価総額の拡大が重要なのは、M&Aなどの資本市場での競争優位を確保できるからである。
今後インダストリ4.0のモジュール化、モジュール間インターフェイスの標準化が進展するとさらに外部サービス事業は円滑に行うことができるようになると推測される。

5 九州地域産業の資質とIOT・第4次産業革命への適応の基本的な考え方

九州地域は、「生産技術や製造設備のシステムインテグレーションの拠点」として世界有数の資質を保有している。資質を活かす戦略が重要である。

5.1 九州地域産業の特徴 ~多様な製造業の集積と生産技術人材の集積~

九州地域においては、歴史的には石炭産業、鉄鋼産業、化学産業などの集積に伴い、プラント制御システムに関わる生産技術集積が進み、近年では、半導体産業、自動車産業、家電産業、食品産業などの多様な産業が立地してきた。
九州の地元製造業企業は、生産技術に競争優位を発揮している企業が多数存在する。例えば、特殊鋼の設計・高精度の生産(加工)技術、複合材料の設計・高精度の生産(加工)技術などである。このことにより、新興国企業が、たとえ製品を分解してリバースエンジニアリングしたとしても、生産(加工)技術の水準が異なるために容易に真似することはできない。部品の生産加工精度の優位性などによる耐久性等の高い品質が九州地元製造業を支えている。

5.2 九州地域の産業の強み~生産技術の優位性・多様な産業におけるエンジニアリング産業、システムインテグレーター産業の集積

九州では、上記経緯から製造設備設計や特殊設備(SPM)の製造などのエンジニアリング産業、システムインテグレーター産業が既に立地している。海外のトップクラスの大手製造業を顧客としてグローバルな活動を行っている企業も存在している。
具体的には、平田機工、三島光産、ICS-SAKABE、オーニスト、プレシード、佐賀プラント工業他、欧米の製造業に対して、量産の生産ラインを、一貫したシステムとして設計・試作・量産テストまで行い提供している製造設備のシステムインテグレーターが多数立地している。

また、三松では、欧州PLMの雄ダッソーシステムのカタログに、自社で開発したアプリケーションを1つのモジュール商品として掲載し、世界中に販売していることは注目される。九州には、生産技術・加工技術に優れた中小製造業は多数存在している。こうした中小製造業のキラリと光る技術をモジュール化して、世界市場へ直接展開することは十分可能と考えられる。
九州地区においては、今後の当該産業の発展は大いに期待できる。

5.3 九州地域のシステムインテグレーション産業拠点としての戦略

第4次産業革命の機会を生かし、新たな企業の創造、育成も図り、「生産技術や製造設備のシステムインテグレーション産業」集積をさらに発展(創造・育成・強化・グローバル展開支援)させていくことが、産業政策として極めて重要である。「製造設備のシステムインテグレーション産業」の存在は、地元製造業のグローバル化、新規市場への展開にも貢献することが予想される。好循環も期待できる。

5.4 九州が総合的に連携して相乗効果を発揮することが重要

九州は、理工系大学の数、教授数、学生数、製造業企業数、出荷額、人口他全ての点で、第4次産業革命の中心地、ドイツBW州に匹敵する規模を有する。九州地域の産業集積を結集すれば、規模や質の面でも決して見劣りはしない。

6 システムインテグレーション産業の市場としての日本の製造業の動向

6.1 生産技術部門の人的資源を縮小してきた日本の製造業

リーマンショック以降、日本の製造業は生産技術部門の人的資源を縮小してきた。工場の新設や設備投資の縮小が続く中で短期的な利益拡大を図るためと考えられる。このため、いわゆる生産準備工程(設備投資の設計~試作までのシステムインテグレーター業務)の内生化率は低下してきていると考えられる。

6.2 日本の製造業には「製造設備のシステムインテグレーターの育成」が必要(経済産業省 ものづくり白書)

円滑なIOT・第4次産業革命は、日本の大手製造業が人的資源投入を縮小してきた「生産準備工程」の生産技術を核としたイノベーションである。また、日本の製造業は、これまでは自社で生産設備の設計・運用を行ってきたため、ドイツや中国などと比較するとシステムインテグレーション産業の集積は少ないと指摘されている。第4次産業革命を推進する上で製造設備のシステムインテグレーターの育成・強化が日本には急務とされている。市場は確実に存在する。

6.3 地域産業の機会と脅威

地域産業には、機会と脅威とが同時に到来している。放っておくことは大きな脅威である。理由は、新興国の製造業の発展と先進国製造業の株式時価総額の向上が予想され、製品市場、資本市場双方での競争が激化する可能性が高いからである。もっとも、同時に大きなビジネス機会が到来していると考えられる。このため、全世界で、地域産業への啓蒙・普及活動が活発に行われている。テストベッドなどはその一環である。

6.4 予想される製品市場と資本市場、双方での競争激化

現在のインダストリ4.0の潮流が3年以内に日本企業に致命的な影響を与える確率は高くない。しかしながら、今後5?10年というスパンを視野にいれた長期戦略には必須のテーマと考えられる。理由は、数年後の競争環境の見通しにある。すなわち、

いずれの領域でも競争環境の激化が予想される。

6.5 外部のプラットフォームサービスを積極的に活用する「バリューチェーンのポートフォリオ」戦略

自社独自のITプラットフォームの整備に期間を要し、自社の製造ノウハウの形式知化・デジタル化・組織知化が、自社単独では難しい場合は、外部プラットフォームサービスの活用によるスケーラブルな事業展開力を早期に獲得することも重要な選択肢となる。バリューチェーンの中での自社のコア(競争優位性)は何かを見定め、コア領域についてはITを活用してブラックボックス化し、一方、ノンコア領域については、世界中の最も優れた外部プラットフォームサービスを活用することによって時間を買うという戦略、いわばバリューチェーンのポートフォリオ戦略を、本格的に考えるべきである。

6.6 海外における地域産業政策

ドイツにおいては州単位でイニシアチブをとって地域産業政策として第4次産業革命への適応支援策が進められている。特に中小企業の第4次産業革命への対応が遅れないように政策として「いかに中小企業を巻き込むのか」が議論され、政府・研究機関はインダストリ4.0推進に向け、中小企業にフォーカスした取り組みを実施している。例えばドイツBW州においては州単位での推進プラットフォームであるIndustrie Allianzが組織され、中小企業にいかに情報提供し、巻き込むのかが議論されている。また、ドイツ連邦全体の動きとしてLNI4.0(ラボネットワーク・インダストリ4.0)などの普及啓蒙機関が設けられている。
同様の動きは、欧米他、シンガポールや中国、東南アジア地域にも拡がっており、ドイツ同様九州の地元企業も自力での第4次産業革命の対応には限界を感じており、九州においても中小企業の投資が遅れないよう支援政策を検討することが急務である。

7 九州地域における第4次産業革命推進上の課題 ~推進人材の育成と確保、階層別のカリキュラムの整備~

7.1 第4次産業革命を推進する人材の育成・確保が重要

九州地域の企業では、「第4次産業革命に関心がありチャンスと捉えているが、具体的にどのように動けばよいかわからない。」という企業が多く、特に、人材面の問題を指摘する企業が多い。比較的大企業でも「システムや技術がわかり事業・経営変革ができる人材に乏しく人材の育成・確保が重要」であり、「システムが分かる人材・リソースが不足していること」が問題である。「現場・技術担当幹部、経営層が、それぞれの立場からの重要性や効果等を理解する場が必要」との指摘は多い。
ドイツでは、大学でインダストリ4.0推進に必要な人材を輩出するために、新しい知識やカリキュラムを提供し、かつ企業人材向けにもリカレント教育を実施している。技術を実践的に活用するOJTトレーニングを実施することで専門人材を企業に輩出している。このような社会人リカレント教育やトレーニングの提供を通じて、技術動向を理解し、企業内で意思決定のコンセンサスを構築できる人材を育成することが重要と考えられる。

7.2 重要な経営者への適切な情報提供

第4次産業革命についての経営者の理解が極めて重要である。現場担当者クラスが重要性を認識していても、経営層が理解する機会に乏しい結果、導入判断・意思決定が遅れるケースも多い。当該領域では日本が得意なボトムアップだけでは迅速な経営意思決定は容易ではなく意思決定が遅れる危険性も大きい。また、第4次産業革命ではビジネスモデル革新や経営改革を伴うケースも多い。例えば製造業から製造プラットフォームサービス業へビジネスモデルを大きく変革させるといったケースである。第4次産業革命は技術論点だけではなく、ビジネスモデルに関わる経営論点である。
九州地域での先行している成功事例もある。平田機工や三松は、第4次産業革命を契機に積極的にグローバル市場でのサービス展開を行いはじめた。これらの企業ではいずれも経営者の理解が推進の鍵になっている。
九州地域の中小製造業においても第4次産業革命を展開する上で、経営者が関連技術動向をトライアンドエラーの中で試して理解し意思決定ができる仕組み(テストベッドやビジネススクール)の構築が重要と考えられる。

8 求められる九州地域企業の第4次産業革命推進基盤の整備 ~実証ラボと産学官コンソーシアム~

8.1 九州の中小製造業は、ソフトウェアの最新技術動向に触れる機会に乏しい

現在の日本の製造業に典型的にみられる弱点は、技術継承、グローバル展開、M&A時のPMIと指摘される。大きな要因の一つに、オペレーションノウハウの多くを現場の暗黙知に依存し、形式知化・組織知化のためのERP(統合業務パッケージ)、SCM(サプライチェーン・マネジメント)、PLM(製品ライフサイクル管理)やIoT(モノのインターネット)関連のソフトウェアへの投資が遅れていること、などが挙げられる。
「第4次産業革命への取り組みの必要性は理解できるが、どの技術から手を付ければよいかわからない。また、技術によって何ができるのかがわからないため具体的な導入イメージが描けない。さらにコストや効果を知る機会がなく投資対効果も不明である。考えていく人材もいない。そのため自社だけで導入することは難しい」と考えている企業が多い。

8.2 疲弊している産業向け教育のスキーム再生が課題

日本における産業向けの技術ソリューション教育、特に、有力な自動車メーカーがない地域においてのそれは、90年代半ばから3D-CAD/CAEを中心としてソリューションベンダー(1次代理店含む)がマーケティング活動の一環として各自治体の産業支援団体に安価に製品を提供する形で企画提案し、地域のSIer(地域代理店)に準備・実施を委託して実現された。日本の多くのポリテクセンターの3D-CAD教育の仕組みが好例である。
ところが、この仕組みは、第4次産業革命関連の教育には、活発に機能していない。そもそも地方は大規模にソリューションを導入する顧客が少ない上、ソリューション製品の単価が大幅に下がっている(1単位当たり数百万→数十万円に低下)ため、ソリューションベンダーが地方に新しい企画を持ち込む営業コストを掛けられない傾向になっている。

また、第4次産業革命以前は、個々の現場の業務支援や問題解決が主な技術教育の対象。従って、産業技術センター等のリカレント教育機関の技術系有識者と企業のエンジニアによるメニュー設計でもよかった。
しかし、第4次産業革命時代の教育は、現場情報の経営活用や経営モデル変革が利用目的。従って、経営視点を持っている有識者と企業経営層とが協議をしてメニュー設計すべきなのだが、地域企業経営者とリカレント教育機関の技術系有識者の間には意識と知識のギャップが大きすぎで会話が成立しない。
つまり、情報・ノウハウが乏しい中小企業にとって、第4次産業革命に関する技術によって何ができるのかがわからないため具体的な導入イメージが描けない。またどの程度のコストがかかり、どのような効果があるのかを知る機会がない。
結果、第4次産業革命に対応するためのシステムインテグレーションの機会が増えないため、日本に不足している製造設備のシステムインテグレーターの育成・強化が進みにくいという悪循環に陥っているのが、日本の実態である。このままでは、日本のシステムインテグレーションは、質・量共に不足し、世界から取り残されるリスクがある。

8.3 九州地域にも、テストベッドを整備しトライ&エラーができる場所を創造することが重要

第4次産業革命の技術は日々進化してきている。完成したものを待つというよりも実証ベースで試しながら検討していくスピード感が重要である。このため、アーヘン工科大学でみられるような、トライ&エラーを通じてスマートファクトリーを体験し理解をするための教育機関付属のラボで、社会人向け、企業人向けのリカレント教育プログラムを提供することが効果的と考えられる。ドイツにおいて中小企業のイノベーションを促進する仕組みとしてアーヘン工科大学等の多くの大学で実証ラボが提供されている。
カールスルーエ工科大、エスリンゲン大学等はテストラボを中小企業向けに提供し、中小企業のイノベーション創出に取り組んでいる。情報・ノウハウが乏しい中小企業にとって、国際標準の技術を試し、経営・オペレーションに活かすためのトライアンドエラーを行える場所の提供が非常に重要である。

9 九州地区における第4次産業革命対応推進構想~第4次産業革命実証ラボ整備~

2016年に開催した研究会・シンポジウムにて、本書にこれまで記した現状認識を九州ものづくり企業及びその関連企業と共有した結果、九州、ひいては、日本全体の第4次産業革命の推進のために、「第4次産業革命 実証ラボ」の整備を行うことで合意した。

9.1 目的

目的は、下記の3つとした。

実証ラボ拠点設立を通じて、製造業の高度化・第4次産業革命における中心地とし、九州を日本中・アジア中から人材・企業が集積する拠点とすることが狙いである。

9.2 整備方針

九州全域に効果を波及させるとともに、九州が日本における第4次産業革命推進拠点となるべく戦略的機能の構築とブランディングを行うこととした。
直近においては第4次産業革命の技術を経営に活かすための実証ラボ機能の整備と、機器・ソフトウェアを活用するためのトレーニングを提供する。

さらに、中長期的には、実証ラボの拠点性を高め「九州=第4次産業革命」のブランディングを行うとともに、その結果として国内外プレイヤーの集積を行うための戦略的機能の整備を行う。基本機能
基本機能は下記の5つ。

9.2.1 戦略機能

戦略機能は下記の5つ。

9.3 推進構想

「第4次産業革命 実証ラボ」はハブ機能とサテライト機能から構成する。
ハブ機能(2~3ヶ所)と、九州全域にわたる複数のサテライト(公設試、理工系大学、高専、中小企業大学校、工業団地コミュニティ他関心のある組織等)から構成する。ハブ機能については、まず既存類似機能(北九州学研都市等)の機能を最大限活用することを考える。
サテライトの整備については、関心が高いサテライト候補組織を広く募り、ハブ機能の機能と連携しつつ機能整備を図っていく。特に、ベンダー紹介や予算獲得支援を行っていく。
また、当該技術領域の目的は必ずしも科学技術の基礎研究を行うということではなく、いわゆる要素技術ではなく、むしろ、既に存在する技術を活用する技能の習得、既存技術を連携させ、経営システムや産業システムとして、どのように取り扱っていくか、設計、運用、保守などの性格を有する。このため、要素技術を組み合わせ、経営システムとして活用することに関心のある教官(高専、理工系大学)が適合する。
従って、経営学、経営工学、MOT、ビジネススクール等の教官の活用を念頭に置き、TT(教員の教員)は理工系大学の教員、高専の講師や公設試の技師、研究内容も当該テーマに近い、九州地域に存在する教官、また実務経験者などの積極的な参加を促す。

9.4 実証ラボの概要

実証ラボには、IOT・第4次産業革命に関する国際水準の製造技術(ソフト・ハード)を常設し、経営に活かすための実証(トライ&エラー)を図れる機能整備を行う

単なる技術の理解のための研修トレーニングではなく、経営層、技術管理者にとっての意義、経済効果、投資コストなどを体感・理解できることとし、企業の投資意思決定・ビジネスモデルの高度化・事業のグローバル展開、企業誘致に繋がっていくことをねらいとする。
また、世界最先端の技術を比較検討する機会(いいとこどり)を提供するために、IOT・第4次産業革命が前提とするオープンイノベーションを推進し、特定ベンダーに依存せず内外の多数の技術ベンダーへ協力を求める。

10 第4次産業革命実証ラボにおけるトレーニングメニュー

10.1 経営技術の形式知化、組織知化、ソフトウェア化による世界平均水準のQCDSの定跡を学ぶ場とする

地域中小製造業の大きな課題となっている業務の1つに受注管理業務と品質管理業務がある。
受注管理業務では、顧客仕様、もしくは協働での設計・開発(デザイン・イン)による製品を一定の品質を維持しつつ、受注時に、「いくら(価格)で、いつまでに、確実に納品できるのか」
という納期回答を、"迅速に"、かつ"精度高く"行うことが、競争優位の確保、事業成長の鍵である。
受託時に提示した価格-売上原価=利益となるため、経営上極めて重要な業務である。
この計算の精度が高まらない限り、納品先が提示した価格、納期で"頑張るしかなく"赤字受注や徹夜作業、納期遅れが発生する。これではいわゆる"下請け"からの脱却は難しい。客提示通りの価格では適正利益どころか原価割れの危険性もある。一方、リスクを勘案しすぎると高い見積もりとなり受注できない危険性を孕んでいるのである。
一方、納期回答や原価計算には、複雑な計算が必要となる。実際は、受注業務は、過去の経験知(+勘)で処理されることが多く、日本の中小企業が下請けから脱却できない背景の一つと言われる。
従って、受注管理業務、品質管理業務の精度向上、及び暗黙知から形式知、組織知への移行を目指すためのカリキュラムから優先的に開発すべきと考える。

10.2 カリキュラム作成方針

九州におけるものづくり企業の多くは、第4次産業革命をチャンスとも捉えているが、技術及び経営への活用についての経営者の情報・理解不足により投資判断に至っていない。
具体的には、各企業向けには、

の3つが必要と思われる。

上記を踏まえたうえで、活用トレーニングカリキュラムは下記の3つのカテゴリーに分類して、直近は、前出1、及び、2を先行して整備することとした。

10.3 デジタルものづくり経営講座

デジタルものづくり・経営講座は、経営層に第4次産業革命が自社に対する新たな機会・脅威になりうることを理解してもらい、企業の投資意思決定についてのコンセンサス形成に導くことを狙いとして、階層別(経営者・経営幹部)に対し、何ができるのか・どう使うのか・どう会社の経営に活きるかについて、国内外の最新情報の共有を実施することとする。基本的な構成は下表のとおり。
直近は、より多くの企業に当てはまるであろう、「①-02.中小製造業(受託型ものづくり企業)向け生産製造管理講座」を優先して具体化を進めるべきとした。

メニューカテゴリーメニュータイトル概要
①デジタルものづくり・経営講座 ①-01.第4次産業革命 最新動向解説 第4次産業革命の最新動向の解説。
①-02.中小製造業(受託型ものづくり企業)向け生産製造管理講座 受託型ものづくり企業の企業システムをデモシステムとして体感できる環境を用意し、経営への効果を理解させつつ、背景になる技術を解説する。
①-03.グローバル製造業向けビジネススクール IOTやPLMを活用し、ヴェーチュアルな世界と製造現場、生産技術とを結び付けて業務高度化を図ることができ、製造知識の形式知化、組織知化を図る技術を解説する。

10.3.1 中小製造業(受託型ものづくり企業)向け生産製造管理講座

10.5 CPSソリューション講座

会社運営の中核にいる層に自社の製品・サービスや業務プロセスのあり方の最先端とのギャップを感じてもらうとともに、自社への適用機会に関する想像を膨らませてもらい、企業における第4次産業革命対応の根幹であるCPSやそのシステムの重要な要素であるIoTソリューションを「自社のどこにどう応用するか」の探索を支援するために、CPSのシステムの重要な要素である個々のソリューションを「体験」する機会を提供する。具体的には、個々のソリューション別にベンダーが標準で準備している製品の学習講座を組み合わせて実現する。

10.5.1 Cyber Physical Systemsとは

CPSとは、企業活動の計画・実行管理・可視化・改善(PDCA)を、精密なデジタルシミュレーションを基点として高速かつシステマチックに連携して行うための仕組みである。

グローバルで事業展開している大企業では、海外での生産能力の拡大・最適配置と、海外生産工場での製品品質の工場・維持をより効率的に行うために、サプライチェーン管理のさまざまな局面でCPSの実装を推進している。
CPSは、単独のパッケージとして存在するシステムではない。複数の業務アプリ・ツール、IoTによる情報収集プラットフォーム、及び、AI/機械学習ツールの連動で成立するソリューションである。

CPSを構成する個々のシステム要素の多くは、2010年以前に普及している。ただ、以前は、CPUの能力、NWの通信能力等、コンピューティングリソースが制約となり、これらを連動させたシステムを運用することはコスト的に難しかった。
ところが、2010年以降のシステム機能やリソースのサービス化(Cloud化)・低廉化がこの「夢」を実現可能にしつつあり、第4次産業革命は、このCPSが世の中全体に普及することを前提とした産業界の将来像を描いているとも言える。
CPSとして構築されるシステムの方向性は、大きく下記の3つに分けられる。

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②CPSソリューション演習 製品 検討前
製造 ②-M01.工場稼動状況の遠隔監視・保守 工場設備の稼働状況をクラウドのDBにリアルタイム集約し、工場の遠隔地で稼動状況をモニタ・分析する仕組み。
②-M02.工場製造指示・実績管理の自動化 工場設備に対する製造指図計画・発行と製造指図の実行結果の集計のデジタル化の仕組み
物流 検討前

このうち、地域中小製造業の大きな課題となっている業務である受注管理業務と品質管理業務の高度化に寄与するのは、「Ⅱ.製造のデジタル・ツイン」である。
そこで、直近では、この「Ⅱ.製造のデジタル・ツイン」に関係するソリューション講座について、先行して検討を進めている。

10.5.2 工場稼動状況の遠隔監視・保守 ソリューション講座

10.5.3 工場製造指示・実績管理の自動化 ソリューション講座

11 第4次産業革命実証ラボの立上・推進体制

11.1 体制全体像

実証ラボ整備推進のための連絡会議を設け、九州全体での機能向上を図る。まずH30年度は【地域ラボ運営主体】(各地域)と、【カリキュラム設計コミッティ】(事務局)を立ち上げ、それぞれを連携させながら、九州一体となった教育メニューの作成に着手、推進する。

11.2 カリキュラム設計コミッティによるカリキュラム集中開発

第4次産業革命に関する経営・実務教育には、経営視点、及び、ソリューション横断的な知識が必要である。対象となるソリューションが多岐にわたる。従って準備すべきメニューは多くなり、相手先のソリューションベンダーも増え、投資・経費もそれなりに発生する。単独の地域・自治体のプレイヤーの努力でカリキュラムを開発するのは財政的にも人材的にも難しい。
そこで、九州全体としてカリキュラム作成と講師育成を行う「カリキュラム設計コミッティ」を継続的に形成。開発されたカリキュラムを各自治体に展開できる形を目指す。
具体的には、北九州高専が中心となり、カリキュラム設計コミッティ立ち上げを計画している。

11.3 地域ラボ運営主体のコンセッション方式によるカリキュラムの展開

基本的には、既に各自治体に存在する産業支援実行団体(工業試験場、公設試、ポリテクセンター等)が、カリキュラム設計コミッティが策定するカリキュラム、及び、ソリューションベンダーが供給するソリューション教育メニューを活用してトレーニングを推進することになる。
もっとも、カリキュラムの性質によっては、集客や事業リスク、教育事業の人材確保などの点で、公的組織だけでは、事業を円滑に推進することが、容易ではない場合も想定される。
この場合に用いられるのがコンセッション方式である。
コンセッション方式とは、場所の確保とプロモーション(集客支援)を
公的組織(各自治体の財団法人 産業技術支援センター、九州経済産業局など)が担い、教育事業そのものの資材・人材提供と収支(=収入―各種費用―部屋代等)責任は、教育トレーニングを行う民間企業に担っていただくという形態である。
これにより、国際的には知名度があるソリューション教育カリキュラムを用意しているが、教育の場の立ち上げ・集客のコストの関係で九州でのカリキュラム提供を躊躇していたベンダーの協力を得られると考えられる。H29年度には、九州経産局で機械学習ソリューションのトレーニングを当該方式で行った実績があり、一部自治体では、同方式を前提としたカリキュラム全体の再整備と新規カリキュラムの展開をH30年度の事業として計画中である。

12 九州の第4次産業革命実証ラボ整備活動の今後への期待

12.1 国内高専を活用した生産管理の国際標準手法の学習の場の整備

日本においては、個々の現場の先端的な生産技術の研究・学習の場は大学・工業高校を中心に数多くあるものの、生産管理の技術研究の場はほとんどないのが現状である。結果、日本企業の多くの生産管理手法は各企業に入ってからのOJTに依存し各企業の我流となっている。
一方、海外においては、生産管理は日本の自動車メーカーを主な範とし学問として研究され、今や世界標準の定跡的手法が国際資格として確立しており、その資格保有は生産管理現場の管理職の必須スキルとなっている。
今回の北九州高専での取り組みは、世界標準の定跡的手法による生産管理を学習する場を作るものにつながると思われる。今回開発するカリキュラム群を全国の高専ネットワークで展開することで、「国際標準」に準拠した生産管理の知識を持ち、海外工場で戦力となる人材の育成、ひいては、国内全体の生産管理スキルの向上につながると思われる。

12.2 地方におけるIT関連雇用の創出・拡大

日本では、先端的な生産・製造ソリューションを提供できる企業は、大企業が集まる太平洋ベルト地域にその営業拠点が集積する傾向にある。従って、それ以外の地方のユーザー企業にとっては、最先端のソリューションに触れる機会そのものが少なく、結果、需要が顕在化していない。また、19歳以降の就労人口、特に、国立大学理系学生や高専生徒の県外流出にもつながっている。今回の取り組みは、その需要の顕在化の場を作ることに寄与するものであり、昨今の各種ソリューション導入コストの低廉化と相まって、地方での最先端ソリューションに対する需要が創出されると思われる。それに伴い、各地域の中堅中小のIT企業のビジネス機会が拡大し、ひいては、各地域のIT関連雇用の増大と若年労働人口の地方定着につながると想定される。

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